「施設か在宅か」の間にいる人たちのこと

親の介護が気になり始めた人が、まず相談に行く場所。

それは地域にある「地域包括支援センター」だったり、担当のケアマネさんだったりする。

そこで何が起きているか。

ちょっと想像してみてほしい。

「母がひとり暮らしで、最近足が弱ってきて…」

「父が施設を嫌がるんです」

「夫婦ふたりで暮らしてるけど、家が古くて冬が怖い」

「子どもには迷惑かけたくないのよ」

こういう相談が、毎日のように持ち込まれる。

で、相談員さんの手元にある選択肢は、だいたいこうだ。

「施設を探しましょう」か、「在宅でサービスを入れましょう」か、「リフォームしましょう」か。

基本、この三択。

もちろん、この三つで解決するケースはたくさんある。

でも、どれにもハマらない人がいる。

けっこう、いる。


たとえば、こんなケース。

ケース①:同居したいけど、できない夫婦

息子夫婦は共働き。母の介護が必要になったけど、自宅に母の部屋はない。

増築するにはお金も時間もかかる。

施設に入れるほどではないけど、ひとり暮らしも心配。

結局、「しばらく様子を見ましょう」で止まる。

もし、息子の家の庭に、小さな離れを置けたら。

母は息子家族のすぐそばで暮らせる。

でも、お互いの生活は独立している。

「同居」の窮屈さなしに、「見守り」が成り立つ。

ケース②:家が古すぎて、住み続けるのが危ない

築50年の戸建て。冬はヒートショックが怖い。

段差だらけで転倒のリスクも高い。

建て替えたいけど、夫婦ふたりのためにローンを組むのは現実的じゃない。

リフォームも、結局広すぎる家の根本的な問題は解決しない。

もし、敷地の中に小さくてあたたかい住まいを置けたら。

建て替えるんじゃなく、必要な分だけの住まいに移る。

工期も短いし、仮住まいも要らない。

しかも、自分たちがいなくなったあと、その住まいは撤去も売却もできる。

ケース③:大家さんが高齢者に貸してくれない

賃貸を探すしかないけど、高齢者というだけで断られる。

保証人もいない。孤独死のリスクを考えると、大家さんの気持ちもわかる。

でも、行き場がない。

もし、身内の敷地に置ける住まいがあれば、

大家さんとの交渉自体が要らない。

家族のそばにいられて、賃貸の壁を超えられる。

ケース④:介護が終わったあとの「住まいの後始末」

親を看取ったあと、介護のためにリフォームした実家が残る。

スロープ、手すり、広げたトイレ——もう誰も使わない設備。

売るにも買い手がつかない。壊すにもお金がかかる。

「マイナスの相続」だ。

もし、介護に使った住まいが「動かせる」ものだったら。

親が旅立ったあと、住まいごと引き取ってもらえる仕組みがあったら。

「出口のある住まい」があれば、子に負担を残さずに済む。


こういう人たち、実は少なくないと思う。

施設は合わない。

在宅サービスだけでは足りない。

リフォームでは根本が解決しない。

賃貸は借りられない。

「施設か在宅か」の二択の間で、行き詰まっている人たち。

今の居住支援の仕組みは、基本的に「賃貸住宅への入居を手助けする」ことが中心だ。

それはとても大事な仕事だけど、

賃貸じゃ解決しないケースに対しては、どうしても手が届かない。


私たちがつくっている「C’ZBシニアリビング」は、

そういう隙間にいる人たちに届くかもしれない、と思っている。

「別棟介護」と「終活の住処」。

この二つの考え方は、特別な仕組みじゃない。

家族のそばに、小さな住まいをひとつ置く。それだけの話だ。

でも、この選択肢が相談員さんの頭にあるかないかで、

「様子を見ましょう」で止まっていたケースが、動き出すかもしれない。

大事なのは、この選択肢を知っている人を増やすこと。

包括の相談員さん、ケアマネさん、民生委員さん。

そういう人たちが「そういえば、こういうのもあるらしいですよ」と言えること。

私たちひとりの力では、届かない。

でも、知ってくれる人がひとり増えれば、

その先に助かる家族が、ひと家族いるかもしれない。

可能性の話だ。

でも、可能性がなければ、何も始まらない。

オクツP